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    電波天文衛星ASTRO-G計画についてのまとめと私的考察
     電波天文衛星ASTRO-G(アストロ-ジー)プロジェクトの中止が事実上、決定した。このプロジェクトは、JAXA/ISASの電波天文衛星計画であり、MUSES-B「はるか」(VSOP計画)の後継計画であった。開発中止に至るまでには何があったのだろうか。今、私の手元の資料と聞き及んだ話を総合して、考察していく。

    ASTRO-Gに関する宇宙開発委員会配付資料その1(電波天文衛星(ASTRO‐G)の状況について)
    ASTRO-Gに関する宇宙開発委員会配付資料その2(宇宙開発に関する重要な研究開発の評価 電波天文衛星 (ASTRO -G)プロジェクトの評価に係る調査審議について)

     なお、資料に基づいてはいるが、筆者は一介の宇宙開発ファンであり、情報収集には限界がある。本稿の内容には勘違いや資料の読み違いに起因する事実誤認が含まれている可能性がある。これについての責任は全て、筆者である金木犀にあることを明記しておく。なお、間違いを発見した場合は忌憚なきご指摘を願うものである。

    1.ミッションの立ち上げ
     ASTRO-Gは、MUSES-B「はるか」(VSOP)によって為されたスペースVLBIの後継計画としてスタートした。「はるか」のプロジェクト名であるMUSES-Bは、Mロケットによる工学実験機2号機という意味であり、つまりMUSES-C「はやぶさ」と同様、工学実験実証機としての開発・運用であった。この成功を受け「VSOP-2計画」としてワーキンググループが立ち上がり、2006年2月、宇宙科学研究所内の審査で、第25号科学衛星「ASTRO-G」計画として選定された。対抗馬は太陽天文であったようだが、今筆者の手元には資料が無く、真偽のほどは解らない。この時点でプロジェクトマネージャ(プロマネ)が任命され、齋藤宏文教授が任に就いた。齋藤教授はそれまで小型衛星プロジェクトを手がけており、「れいめい」(INDEX)などの開発に係わった。なお、教授はASTRO-Gワーキンググループに参加していなかったとのことである。

     同じプロジェクトに対して複数の呼び方があるが、本稿では、プロジェクト名である「ASTRO-G」に統一して混乱を避けることにする。

     従前の「はるか」は、当初から宇宙科学研究所(以下ISAS)・国立天文台(以下NAOJ)を中心とした電波天文分野全体として推された計画であった。しかしASTRO-G立ち上げの時期は、NAOJがVERA計画・ALMA計画という国際的な大規模プロジェクトを開始した時期と重なってしまい、人的・予算的に、立ち上げたISASが期待していたような協力体制を構築するには至らなかったようである。
     これはまた、工学実験機と実用機の差でもあったのだろうか。この辺は想像するしかないが、後々まで響いたことは間違いないであろう。
     2006年6月から7月にかけ、ASTRO-Gは宇宙開発委員会での事前審査を受け、開発研究段階に移行した。そしておよそ1年後の2007年4月にプロジェクト移行審査を通過、7月にプロジェクトチームが発足した。
     更に1年後の2008年7月から8月にかけて宇宙開発委員会での事前審査を受け、プロジェクトは開発段階に移行した。

    2.足りないアンテナ精度
     ASTRO-Gの真骨頂である展開アンテナは、ワーキンググループ立ち上げの頃、きく8号開発において得られた技術を高精度化して使うこととして開発が進められた。これはNECが開発しており、ISASは衛星開発においてNECと長いつきあいがあること(メーカーが少ないのだからある意味当然の帰結ではあるが)を忘れてはなるまい。
     また、2002年頃からアンテナ展開時の精度不足については認識があったが、2006年2月のミッション採用時点においても、根本的な解決方法は得られないままだったようである。また、2004年の時点で、要求よりも3倍悪い値が出たとのことである。最終的にこれがどこまで詰められたのか、または広がったのかについては、現時点で筆者の手元には資料がない。

     問題が顕在化したのは2009年第一四半期のことであった。この時 プロジェクト進捗報告会(LUNAR-Aを教訓として、上層部による定期的な進捗把握を目的として導入された会)において報告されたのは、以下の3点である。
    ・地上局等におけるNASAとの協力が不成立になったこと
    ・アンテナの技術的課題が顕在化したこと
    ・上記2点に起因して、資金超過が見込まれること
     ここで、基本設計確認会に関すること以外のプロジェクトはいったん休止された。そして、基本設計確認会においてアンテナ評価が未完了であることが公式に確認されたのであった。次いで第三四半期に再設計確認会を行ったが、アンテナ鏡面精度の不足および精度達成のための技術的課題が確認された。同時に、アンテナ以外での問題の洗い出しも行われた。
     この、2009年第一四半期から第三四半期までのどこかの段階(恐らく基本設計確認会か再設計確認会)で、エンジニアリングモデルを作成して展開再現性の実測を行い、精度を満足しないことを実証したとのことである。
     そして2009年10月、ASTRO-Gプロジェクトは休止され、技術的成立性の検証(つまり、要求精度通りの物を作れるか否か)に入った。

    3.予算超過
     プロジェクト提案時には、マージン込み120億円という上限が提示されていたとのことである。提案時点の公式コストもこの通りである。しかし、2010年の時点で最終的に判明した総コストは、提案時の約2倍であった。プロマネは、2006年の就任直後の調査によって、見積額に不足があることを直感していたとのことである。
     2006年9~10月に行われたRFP(入札)によって、ASTRO-Gはコストを大幅に超過することが確実となった。その後は詳細な見積もりを行うたびに総コストが積み上がっていくという、「茨の道」、負のスパイラルに突入したようである。
     ちなみに、2011年8月24日の宇宙開発委員会において、池上委員長からこれまでに使った予算の総額が質問として出たが、それに対する回答は「予算上では28億円」という、聞きようによっては含みを感じさせるものであった。

    4.休止から中止へ
     以下は流れを述べる。
     2009年11月から2010年7月にかけ、技術実証チームによって技術的成立性の試験・検証が行われた。
     2010年7月から9月、ISASの宇宙理学委員会においてASTRO-Gの再評価を行い、「ミッション定義に戻って再検討するのが妥当である」とされた。プロジェクトは振り出しに戻った。
     9月から12月、宇宙科学運営協議会(半数をISAS外委員で構成するISAS所長の諮問機関)で更に評価を行い、中止が妥当との結論をISAS所長に答申した。そして12月、ISASはASTRO-Gプロジェクトの中止を決断した。
     明けて2011年1月、JAXA理事会にISAS判断を報告、中止に向けた準備に入った。「ASTRO-G計画教訓委員会」が設置され、教訓とその活用について審議し答申が行われた。6月、終了審査が行われ、総括・評価を行って中止が妥当と判断した。
     7月、JAXA理事会議において、終了審査の結果が報告され、了承された。
     8月24日、宇宙開発委員会において、中間評価を行った上で中止が妥当との結論に至った場合には事後評価を行うこととなった。結果は9月中を目途として宇宙開発委員会に報告される予定である。

    5.個人的考察
     まず、目的を達成できなかったのだから、プロジェクト全体としては失敗である。状況を追っていくと、当初から、よく言えば楽観的、悪く言えば事前評価が甘かったように思う。技術的困難にぶち当たり、それを解決できなかった点で、LUNAR-Aの教訓を導入しつつもその有効な活用に失敗したのではないかとの思いが強くなる。
     以下、LUNAR-Aの問題点とASTRO-Gの問題点を、筆者が把握している範囲でまとめてみた。

     

    LUNAR-A

    ASTRO-G

    事象と

    影響

    ミッション機器(ペネトレータ)の技術的課題による開発遅延

    →予算増加

    →開発期間増加

    →打上げ機会の逸失

    ミッション機器(大型展開アンテナ)の技術的課題による開発遅延


    →予算増加

    →開発期間増加

    監査

    第三者機関の不在、もしくは(存在した場合の)機能不全

    プロジェクト進捗報告会による定期的な把握

    開発期間

    1991年~2007年(16年)

    2006年~2011年(5年)

    使用予算

    公称154億円

    公称28億円


     ASTRO-G・LUNAR-Aは技術開発の失敗(あるいは将来の見積もりの失敗)と予算超過、所定の期日に上がらなくなったことが開発中止の直接の原因である。両者の原因は、非常に似ていると言える。
     だが、ASTRO-Gでは第三者機関が機能したように見える。進捗報告会はLUNAR-Aの教訓を活かして設置された外部の識者も入るISAS所長の諮問機関であり、今回、ISAS所長に答申をしている。また、正式プロジェクト化後に開発が実際に走った期間と使用予算は大幅に圧縮されており、一定の効果があったことが分かる。しかしながらこれは結果論であり、プロジェクト化の時点で充分な検討が尽くされなかったこと否定できない。
     温情、人間関係、政治的配慮、そんなものもあったのかも知れない。良くも悪くもISASは元をたどれば東大であり、今は総合研究大学院大学の一部にもなっている。その創立以来、学問の場としての大学というのは変わっていない。しかしながら、それが負の側面に働いた事例が、LUNA-AとASTRO-Gであったのではなかろうか。
     資料を読んでいて、やるせなくなってくる。ダメになった計画を追うことほど悲しくなることはない。だが、これに蓋をしてはいけない。
     LUNAR-Aほど長引かなかったのはせめてもの幸いだろう。これに萎縮することなく、これを糧とし、宇宙科学がより発展することを願ってやまない。今やるべきは、徹底した原因究明と再発防止であって、悪い子探しや技術以外の責任の追及ではないはずだ。さもなければ、三度目が起きるだろう。

    主要参考資料:
    宇宙開発委員会議事録および配付資料
    齋藤宏文「宇宙科学ミッションのために―プロジェクトXをめぐって―」(電子情報通信学会技術報告Vol.111 No.90、2011/6、pp51-58)

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    この記事のコメント
    長文執筆お疲れ様です!
    委員会開催日の晩に記事をアップされるとは、お仕事の速さに脱帽します。
    計画中止につきましては、いつものことですが、「誰に責任が」ではなく、「何が原因か」をちゃんと検討して欲しいものです。
    特に今回のプロマネは、アンテナ精度問題の原因となった事象が既に発生していた段階で任命されたようですし、中止の咎を問われるようなことがあれば、それはお門違いでないかと思います。
    そのようなことにならなければいいのですが。

    蛇足ですが、「れいめい」打上6周年目の日に、同じプロマネのASTRO-Gが中止になるとは、何かの運命でしょうかね…。
    2011-08-25 Thu 01:16 | URL | Ivan Ivanovich #qhVXTLRM[ 内容変更]
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    2017-02-18 Sat 01:28 | URL | Linwooditefe #flig9r2c[ 内容変更]
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