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      ・種子島ロケット見学マップ(PDF版:2010年現在)はこちら(リンク先画面のダウンロードをクリック)
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    OT-75Sロケット(OT-75ロケット)についての考察
     私の同人誌「OT-75Sロケットのひみつ 改訂版」をそのまま転載。なお、写真・文書に関しては、特に記載がない限り林紀幸さん(元ISASロケット班長)の私物である(公開許可済)。また、全ての画像はクリックで拡大したものを見られる。(2013/11/27、旧版から改訂版に差し替え)
     PDF配付もしています>http://www5.atpages.jp/rocketmania/ot_75_kai_web.pdf

       はじめに
     OT-75というロケットがある。内之浦宇宙空間観測所の起工式に打上げられた、小さなロケットだ。宇宙開発ファンの中には「謎のロケット」という者もいる。たった2回しか打ち上げられなかったがために。あるいは、その資料の少なさの故に。
     いま、この謎に包まれたロケットについて、考察を加えてみたい。

       1.名称について
     Webで調べてみる限り、このロケットの名称は3種類挙がっている。ひとつはOT-75(WikipediaおよびISASニュースおよび宇宙研HP)ひとつはOT-76(明星電気)、最後はOT-75S(「観測ロケット続5年 : 運営と行政の記録」)である。
     いま手許の資料(注:「SEノート鹿児島No.1」および「観測ロケット続5年:運営と行政の記録」)を見るに、1962年2月2日の開所式での打上げは「OT-75S」、同年8月21日の実験に係わる写真を見ると「OT-75-2」となっており、OT-75あるいはOT-75Sが正式名称だと考えて良いだろう。思うに明星電気HPの「OT-76」は、コピー資料か何かを参照した際に、「5」が潰れて「6」と誤認したものではないだろうか。
     型式名に関する考究はこれ以上の資料がないため、この本ではひとまず「OT-75S」する。

     次に型式名の意味である。はじめの「OT」は、Operation Testの略であり、次の数字は機体外径、末尾のSは「Single」、つまり単段を意味する。"Operation Test φ75mm Singlestage"ということである。
     よって、この型式名は「施設新設に伴うロケット打上げ準備および発射実験にともなう手順確認試験用の外径75㎜のロケット(単段式)」と読み解くことができる。(なお、外径については異説がある。詳しくは「4.設計と製作」で触れることにする)

    OT-75S図面3
    OT-75S 図面(金木犀作図)

       2.打上げ実績
    OT-75S :1962年2月2日(金)14時30分
    OT-75‐2:1962年8月21日(水)

     初号機の打上げは、鹿児島宇宙空間観測所の起工式に伴うものである。当時の東大総長の茅誠司によって発射ボタンが押され(あるいはキースイッチがひねられ)、早春の空へと飛び立っていった。
     2号機の打上げは、施設完成後のテスト打上げであろうと考えられる。後に掲載する集合写真のパネルには本機とK-8L-1、AT-150が併記されているが、この中では本機が一番はじめに打上げられた。(OT-75-2が1962年8月21日、翌8月23日にAT-150-1、24日にK-8L-1が飛んでいる)
    OT-75S-p2.jpg

       3.仕様
     「SEノート鹿児島N0.1」と題された当時の書類に記された機体スペックおよび実験目的は以下の通りである。
     機体概要
      全  長:1684mm
      外  径:75mm
      全重量 :14.0㎏
      到達高度:2~3㎞
      水平距離:6~7㎞
      飛翔時間:40~50秒
      光学観測のため発煙剤搭載

     実験目的
      鹿児島宇宙空間観測所(現・内之浦宇宙空間観測所)における観測ロケット発射に必要な諸作業(ロケット輸送、運搬、実験実施の際の連絡、警戒など)の方式を研究検討するため、及び光学観測点の位置選択の資料を得るため。

     将に「オペレーション・テスト」である。
    OT-75S-p3.jpg
    (SEノート鹿児島N0.1原本)

       4.設計と製作
     製作は当時のプリンス自動車(日産自動車宇宙航空事業部を経て現在はIHIエアロスペース)が行った。設計担当が東大生産技術研究所であったのかプリンスであったのかは、未だ判明しない。日産航空宇宙事業部の30年史に「当社のOT-75」という記述がある。
     燃料はエポキシ系コンポジットとのこと。

     なお、取材の過程で、このロケットの成立については二つの話を聞いた。以下に併記する。
     なお、前者は当時宇宙研に在籍していた林紀幸氏、後者は同じく当時プリンス自動車に在籍していた垣見恒男氏から伺った話を元にしたものだ。ただし、お二人ともこのロケットの製作・設計に直接関わったわけではないと明言されていたので、あくまで推測の域を出ないことに注意されたい。
    1:生産研はこれ以前、道川でいわゆる「とりもち燃料」のφ75㎜のロケットを打ち上げていたという話がある。これが設計の基礎になったのではないか、という推測。
    2:防衛に関連してプリンス自動車内で行っていた設計、もしくは機体を、発注があったOT-75Sに流用したのではないか、という推測。なぜならば、当時プリンスは防衛庁からAAR(Air to Air Rocket:空対空ロケット)の試作を受注しており、その本体を流用した可能性があるため。(参考:AAR試作は昭和32年度(1957年度)から始まっているので、時代的には合う)

     なお、図面に起こす際に、パースをPhotoshopにて補正した写真に定規を当ててみたが、直径75mmよりも細い(70mm程度)のではないか、と感じた。これに関しては、垣見氏のお話の中で出たAARの話が事実とすれば、この直径は70㎜であったとのことで、整合性がとれる。いずれにせよ充分な裏付けとは言い難く、機体サイズに関しては更なる考証が必要である。
    OT-75S-p4.jpg
    OT-75S-1打上げ準備風景

    OT-75S-p6.jpg
    鹿児島宇宙空間観測所起工式式次第

    OT-75S-p5.jpg
    OT-75S-2準備作業開始前の集合写真

      5.機体構造の推測
     実物および写真を元に、本機の構造を述べる。
     まずは、実機の残るチャンバ部分から。この部分が記録写真と一致することと、林氏より伺った話から、今回出現したチャンバ部分はOT-75S同型機のものであると同定することができた。サイズは前掲の図を参照されたい。
     記録写真では分からない、尾翼やノズルの取り付け方法などもよく分かる。
     尾翼は、直角に折れ曲がった縦長の固定板にサンドイッチされ、固定板とは5本のリベットで結合された上で機体に取り付けられている。機体との接合方法は線状の溶接である。機体後部から見ると別素材の線材を用いて接合しているようにも見えるので、あるいは蝋付けかもしれない。
     ノズルは後端が翼の後端と揃っており、突出しない。翼や後端部と同一材料を使っていると思われる。後端部の内径が50㎜の、単純な円錐形である。周囲に180度離れた二ヶ所の切れ込みがあることから、カニ目レンチのような形の治具でねじ込んで固定しているものと思われる。現在では固着していて動かすことができないため、これ以上の検証は困難である。ノズルと後端部の外板は同一素材だと思われるが、一体成形ではない。
    4枚の尾翼それぞれの直上にマイナスネジが一本ずつある。このネジは沈頭ではなく、1本あたり2.5㎜の突出がある。正対位置にあるので、合計すれば5㎜の突出。機体外径70㎜、ネジ突出5㎜、合計すれば75㎜となり、型式名との整合も取れる。
     尾翼上端位置に段差があり、機体外径が絞られる。絞られた厚みは尾翼固定板の厚みと一致する。
     次に、記録写真から分かることを述べていく。

    写真を元に、本機の構造を推測してみたいと思う。
     先端部から。ノーズコーンの部分にリベット、あるいはネジが見える。また、その下、写真では濃い灰色になっている部分が一箇所、短冊形に色が変わっている。その部分をよく見ると、おおよそ拳一つ分の間隔を開けて、縦に並んだ二箇所の穴が見える。思うに、この縦並びの穴は、発煙剤(四塩化チタン)放出のためであろう。
     すると、写真で作業者の右手がかかっているあたりまでが、四塩化チタンを入れるタンク部と推測できる。右手小指から尾翼側に数㎝のところで色変わりするが、この付近から尾翼方向に向かって燃焼室があったと考えている。
     さらに、リベット留めをしているノーズコーン部分にタンクがあったとは考えづらく、リベットやや下の色変わりをする所から先端には四塩化チタンタンクはなく、がらんどう(あるいはくりぬかずにそのまま金属が詰まっているのかもしれないが)だと考えられる。
     カラーリングは恐らく宇宙研伝統の赤と銀色であろう。色が濃い部分が赤、薄い部分が銀色と考えている。
    OT-75S-p7.jpg OT-75S-p8.jpg
    写真:解説を書き込んだ。

    IMG_1521-2.jpg IMG_0516_20131127222211958.jpg
    IMG_0514.jpg
    実機写真:全体像、ノズル、尾翼留め構造

       初版あとがき
     液酸/液水、20冊目の本をお届けします。初のロケット解説本になりました。
     OT-75Sは、以前、新宿ロフトプラスワンで行われた「ロケットまつり」というイベントでその存在を知ってから、ずっと気になっていたロケットでした。元来「物事のはじめ」が好きな私にとって、初めて知る「内之浦宇宙空間観測所の初号機」は、謎のベールに包まれた、胸躍るロケットだったのです。
     ですが、調べても調べても、これがどんなロケットだったのかはベールの向こう。ただ1枚の写真と、機体直径が75㎜で単段式だったらしい、という以上の情報は手に入りませんでした。これが変わったのは今年の10月。ふとしたきっかけで誘われた、宇宙研OBの林紀幸さんの荷物整理の際に、本書掲載の資料を発見したのでした。かくして本書が成ったという次第。

     末筆ながら、資料整理会にお誘い頂いた鳥システムズの鳥坂さん、および資料掲載を快諾下さった林さん、メーカー側から貴重なお話を聞かせて頂いた垣見さんに感謝申し上げ、筆を措きます。 
       2010年11月11日 1時47分     金木犀 拝


       改訂版あとがき
     液酸/液水28冊目の本は、OT‐75Sのひみつ改訂版です。なんと、改訂版ですよ! 嬉しいことです。
     1年前に元版を出した後、元宇宙科学研究所ロケット班の林紀幸さんから、「田舎の家の裏にOTがある。帰ったら持ってきてあげる」というお話がありました。そして登場したのが、今回紹介したブースタ部分の実機です。やってきたのは2011年12月18日、素晴らしいクリスマスプレゼントでした。
     全体に錆びてはいますが、機体の様子がよく分かります。実機に勝る資料なし、を実感しました。

     最後に、貴重な資料をご提供下さった林紀幸さん、垣見恒雄さんに感謝申し上げ、筆を措きます。

       2012年3月11日 0時31分     金木犀 拝


       参考文献
    下村潤二郎「観測ロケット続5年:運営と行政の記録」(『東京大学宇宙航空研究所報告』東京大学宇宙航空研究所 pp258-263 1966年3月)
    林紀幸、垣見恒男ほか『昭和のロケット屋さん』(エクスナレッジ 2007年12月)
    『宇宙航空部20年の歩み』(日産自動車株式会社宇宙航空部 1973年9月)
    大澤弘之監修『新版日本ロケット物語』(誠文堂新光社 2003年9月)
    的川泰宣『やんちゃな独創 糸川英夫伝』(日刊工業新聞社 2004年5月)
    斉藤成文『日本宇宙開発物語 国産衛星にかけた先駆者たちの夢』(三田出版会 1992年4月)

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    2014-12-24 Wed 13:38 | URL | geRoesonhho #vYj6Uw2M[ 内容変更]
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