文系宇宙工学研究所へようこそ!



    宇宙ニュースが中心のブログです。同人サークル「液酸/液水」の告知ページでもあります。

    告知板  ※IE・Sleipnir・Firefox推奨。
      ようこそ文系宇宙工学研究所へ。
      管理人・金木犀の同人サークル「液酸/液水」の告知ページも兼ねています。

      ロケット打ち上げ見学の案内がメインのはず。種子島、内之浦のロケット&観光情報、最新の宇宙ニュースなどを紹介。
      打上げ見学記「ロケット紀行」シリーズ、打上げ見学と宇宙関係施設観光のためのガイドブック「宇宙へ!」などの同人誌を販売中。


     オススメ・お役立ち  
      ・種子島ロケット見学マップ(PDF版:2010年現在)はこちら(リンク先画面のダウンロードをクリック)
      ・ロケット見学案内記第6版(PDF版:2011年現在)はこちら(リンク先画面のダウンロードをクリック)

    イベント参加予定:東京とびもの学会2017 3月12日(日)於ハイライフプラザいたばし
             おもしろ同人誌バザール3 4月2日(日) 於JR大崎駅南改札前 大崎夢さん橋
             COMITIA120 5月6日(土) 於東京ビッグサイト

      自家通販            委託中(『ロケット紀行』他)通販あり
                 

    「だいち」(ALOS)の現状を聞いてきた:宇宙開発委員会傍聴
     2011年4月27日に開催された、第13回宇宙開発委員会を傍聴してきました。その中から、「だいち」関係のことをまとめます。報道機関や宇宙関係企業・機関に所属しない、ただの一般人は私だけでした。

    「陸域観測衛星「だいち」の電力異常について」(JAXAプレスリリース)
    配付資料(PDF)への直リンク(JAXAサイト内)

    1.電力異常発生前後の運用について
     時系列順に、適宜解説を加えつつまとめます。

    2011年4月22日(金)
    ・5:59~6:35(日本標準時。以下同)の、データ中継衛星「こだま」経由の運用では正常であった。
    ・7:23~47の「こだま」経由の運用で、軽負荷モードに入っていることが判明した。テレメトリ解析の結果、6時41分10秒に電力低下があり、これが原因で軽負荷モードに入ったことが確認された。
    ・これ以降の運用で、発生電力が次第に低下していくのが確認された。テレメトリデータを地上に降ろして再生する運用や、衛星の負荷を軽減するために各所のスイッチを切るなどの運用を行った。
    ・この日の最終運用となる23:44~58のサンチャゴ局(チリ)運用では、テレメトリデータを受信できた。

    4月23日(土)
    ・この日最初の運用である0:49~のキルナ局(スウェーデン)運用で、テレメトリデータが受信できなかった。
    ・これ以降27日まで、テレメトリの受信は出来ていない。

     なお、現在バッテリは枯渇していると考えられる。

    軽負荷モード:異常発生時に搭載機器類の電源を自動的にオフにするなどし、電力負荷を最小限にして衛星の状態を把握するためのモードである。今回の場合は、「発生電力が5000Wを下回る」という条件を満たしたので軽負荷モードに移行した。

    2.異常箇所について
     テレメトリ解析の結果、姿勢・軌道の制御系や、通信系に異常は認められていない。よって、電源系の機器に何らかのトラブルが起き、電力低下を招いたと考えられる。その結果、バッテリ電力のみの供給となり、その枯渇をもって衛星の機能停止に到ったと推定される。
     今は、全ての可能性を排除せずに不具合箇所や状態の特定をしている。そのため断言はできないが、太陽電池パドルからシャントに到る経路の途中でトラブルが起きた可能性が非常に高いと考えている。(シャント:衛星バス(衛星本体)内にあって、太陽電池パドルから来た電力を電力制御器に伝達するとともに、余計な電力を熱として放出するための機器。詳しくは上記配付資料の5ページを参照)

     異常が起きたそもそもの原因についての話は出なかった。

    3.今後の計画
    ・異常発生後は地上局を「だいち」のために優先的に割り当てて運用している
    ・今後の復旧の可能性は極めて少ないものの、僅かな可能性を求めて運用継続する
    ・具体的には、太陽電池パドルに光が当たる日照時にテレメトリ受信等を行う。これは、既にバッテリが枯渇しており、日照時でなければ電力供給が期待できないためである。
    ・季節変動によって、5月中旬以降は発生電力が低下するため、ここまでは運用を継続する

     さて、ここから私見を交えます。

     「僅かな可能性」とはいうものの、復旧の望みはかなり薄いと考えます。「みどり」「みどり2」「のぞみ」……電源系トラブルによって散った宇宙機達を連想します。一縷の可能性に賭けるという点で、ショートした回路を焼き切るためにおよそ1億3000万回の同一コマンドを送り続けた「のぞみ」の運用を思い出します(今回「だいち」に起きている現象は全然違うので、同様の運用をするわけにはいきません)。
     宇宙機にとって、電力は命の源。これなくしては通信ができません。通信ができないということは、復旧コマンドの送りようもないし、現状把握も出来ないということ。トラブル時に状態を把握するための運用としては「1ビット通信」が有名ですが、電力が供給されていなければそれすらできないのです。

     私が今、「だいち」の現状をどう思っているか。人間に例えれば「死亡と推定される状態」だと考えています。死亡したと確定するためには実際に身体を医師が診察し、診断することが必須ですが、人工衛星の場合、これは技術者なり科学者なり、その衛星について知識のある人間が直接観察することに当たります。ですが、軌道上のものを直接観察することは基本的に無理(スペースシャトルで修理に行ったハッブル宇宙望遠鏡のような例外もありますが)ですので、手許のデータを元に推定するしかありません。
     そして推定はあくまで推定でしかないので、「絶対に復旧の可能性はないのか?」と問われれば「限りなくゼロに近いが、皆無とは言えない」と答えるしかないのです。

     ですが、無限に運用を続けるわけにはいきません。予算も時間も人的資源も限られていますし、大切な地上局をいつまでも塞ぐわけにはいかないのです。そこで出てきたのが「5月中旬以降は発生電力が低下ため、ここまでは運用を継続する」という話だと考えます。これをもっと分かりやすく書き換えると「発生電力低下という節目まではやりましょう」となります。上記同様医療の話に例えれば「もうほとんど無理だろうけど、家族が納得するまでは心臓マッサージを継続する」となるでしょうか。心臓マッサージなら生命の不思議、人体の力によって九死に一生があるかもしれませんが、「だいち」は人工物ですからね……。

     万が一、億が一の奇跡が起こって欲しいとは思います。「だいち」は私が初めて名付け親になり、我が子のように思ってきた人工衛星です。こんな突然の別れになるとは予想だにしていませんでした。

     ですが、これが現実でしょう。今回の宇宙開発委員会での喪失報告=臨終宣告も想定していただけに、約半月の猶予がもらえたのは嬉しいです。
     次に動きがあるのは、恐らく5月18日、あるいは25日の宇宙開発委員会ではないかと思っています。まずはそこに注目しようと思います。

    IMG_4696.jpg IMG_4697.jpg IMG_4699.jpg IMG_4700.jpg
    写真:種子島宇宙センターの宇宙科学技術館に展示されている「だいち」試験モデル

    別窓 | 宇宙開発 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    <<ロケットまつり44に行ってきた | 文系宇宙工学研究所 | 陸域観測衛星「だいち」(ALOS)電力異常>>
    この記事のコメント
    コメントの投稿
     

    管理者だけに閲覧
     

    この記事のトラックバック
    | 文系宇宙工学研究所 |
    1. 無料アクセス解析