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    未来へ続くために――「はやぶさ2」計画
     6月13日、工学実験衛星「はやぶさ」は帰ってきた。
     再突入カプセルは完璧に作動し、無傷で回収できたようだ。
     とても素晴らしい。しかし、これで終わりではない。

     世間では「はやぶさ」は小惑星探査機と報じられ、JAXAの一部ページもそのような表記をしている。確かに、機能からすれば間違いない。
     けれど、実はこれは大きな勘違いを含んでいる。
     私は冒頭、「はやぶさ」を工学実験衛星と書いた。「はやぶさ」のコードネームは「MUSES-C」。この意味は「Mロケットによる宇宙工学実験衛星、3機目」である。惑星間探査機に付けられる「PLANET」の名を冠していないのである。

     何を実証するのか。

     手許の『JAXA NOTE 2008』をひもとくと、こう書いてある。

    (1)光学技術実証(将来の本格的なサンプルリターン探査に必須で鍵となる技術を実証)
    (2)サンプルリターン(Sample return)技術の確立
    (3)4つの重要技術の実証(イオンエンジンを主推進機として用い、惑星間を航行すること/光学情報を用いた自律的な航法と誘導で、接近・着陸すること/微少重力下の天体表面の標本を採取すること)

     「小惑星表面の物質を持ち帰る」のはセンセーショナルではあるが、「はやぶさ」計画においては数ある目的の一つという位置づけだ。
     カプセルに星のかけらが入っているか否か。これは重要な問題だ。もしも入っていれば、人類は月以外の他天体で直接採取した岩石サンプルを初めてその手に収めたことになる。だがしかし――

     ここで(1)に注目してほしい。「将来の本格的なサンプルリターン探査に必須で鍵となる技術を実証」とある。

     そう、「はやぶさ」は、将来に続く計画を見据えた上での試験機、という扱いなのだ。そこにはプログラム探査への意欲が見える。そして、工学実験衛星としての本来の任務をよく果たし、数々の素晴らしい成果を上げた。
     イオンエンジンの長期間動作実証をやったし、それで惑星間往復航行ができることを証明した。イオンエンジンによる動力航行で地球スイングバイを行ったのは「はやぶさ」がはじめてである。
     イトカワの表面を精緻に観測し、その成り立ちについての知見をもたらした。リチウムイオンエンジンの宇宙空間での長時間動作実証もした。不本意な形ながらもニコイチエンジンやキセノン生ガス噴射による姿勢制御など、有る者を徹底的に使ってロバスト性を高めることの重要さも教えてくれた。
     人間の制御下で惑星間空間からのダイレクト再突入をやったのは、「はやぶさ」が初めてである。綺麗な流れ星となって、最後まで実験衛星としてのつとめを果たした。
     他にも成果は数多い。「はやぶさ」の観測や技術実証を元にして多くのことが分かったし、少なくとも今後数年は新たな論文が発表され続けるだろう。

     これら数々の検証実験は、自らやらねば得られなかったものであり、誇るべき成果だ。他国がやった場合、情報を得ることは難しくなるし、「どうやったか」という核心技術やノウハウが明かされることはまずないだろう。

     いま何より重要なのは「はやぶさ」が実証してきたことを徹底的に検討して、後の計画につなげることではないだろうか。実験衛星から本番の探査機へ継承することである。「はやぶさ」では結果的に数々の危機を乗り越えることによって感動を生み、応援者が増えたのだが、トラブルはないほうがいいのは当然のことだ。
    ……逆にロバスト性への徹底的なこだわり、帰還させることに対しての恐るべき執念をを見ることができたのは、「人」を通して宇宙開発を眺めている私にとって、とても興味深いことであったのだけれども。

     後継機の計画は既に持ち上がっている。このブログで時折取り上げてきた「はやぶさ2」や「はやぶさMk2」などがそれだ。中でも「はやぶさ2」は、1999 JU3という具体的な目標も決まって、すでに開発の一部が走り出している。
     この小惑星への打上げウインドウ(打上げ可能期間)は、2014年に開く。それを逃すと次のチャンスは2020年代となり、計画は頓挫する。

     開発体制はすでに走り出しているものの、予算が付いてきていない。人工衛星の開発機関はおおむね5年。遅くとも来年度予算で充分な手当がされなかった場合、計画は予算不足で中止に追い込まれる公算が非常に大きい。そして、技術は拡散し、失われていく。
     「はやぶさ」プロジェクトマネージャの川口淳一教授は、期間後の記者会見でこう言っている。

    質問者:今回の経験を受けて、今後に伝えたいこと。

    川口:次の世代が担うしかない。自分はあと7~8年あるが惑星探査は完結しない。次を立ち上げるのが最後の仕事だろう。
    挑戦することにためらいを持たないでほしい、これだけは言っておきたい。
    今日ではやぶさは終わるが、技術の風化と拡散が始まっている。伝承する機会がもう失われているかもしれない。
    これを理解してもらい、将来につなげるミッションを立ち上げる必要がある。
    宇宙作家クラブニュース掲示板

     現場では危機を感じているのだろう。だが、上層部や国の動きは鈍いように見えて仕方ない。
     再来年度や数年後では遅すぎる。来年度予算が付かないと「はやぶさ2」は頓挫する。そして、次年度予算の予備編成は夏から始まる。これから1~2ヶ月が勝負だ。

     私は文系の人間で、「はやぶさ」が工学的・科学的にどんなにすごいことを成し遂げたのか、完全に分かっているわけではない。ただ、そんな人間でも、探査機の動向に一喜一憂し、イトカワという未知の天体の眺めにはわくわくした。そこには、夢やロマンや人間ドラマがたくさんあった。
     「すごいことが進んでいる」と感じさせる熱気が伝わってきた。

     小惑星、できればこの目で直接、間近に見たいけれど、いまだ惑星間空間に人間を送る技術は熟していない。その意味で「はやぶさ」やそれに続く衛星達は目であり耳であり、人類の形代であるとも言えないだろうか。

     また、新たな世界を拓くわくわくを感じてみたいのだ。
     「はやぶさ」が面白かったと思うならば、ぜひとも後継機への応援をしてほしいと思う次第である。

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