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    「はやぶさ」が帰ってくる
     ついに、この日が来ました。
    小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)のTCM-4、WPAへの精密誘導完了
     2010年6月9午後3時前、ウーメラ実験場への最終誘導、TCM-4が終了しました。
     打上げは2003年5月9日。帰還予定日は2010年6月13日。7年と1ヶ月少々の旅路です。
     その間、動向を追いかけてきました。

     ダメだ、と思ったことが何回もありました。
     2003年10月、太陽フレアにより障害発生。「のぞみ」の悪夢が頭をよぎりましたが、幸いにして損害軽微。
     2004年7月・10月のリアクションホイール(姿勢制御用弾み車)の故障。
     2005年11月、イトカワ着陸。この時は一晩中PCの前でライブを見ていた記憶があります。今目の前で起きていることがとても面白かったのです。的川先生のVサインに狂喜乱舞したっけなぁ。
     そして、直後の大規模障害。深刻なダメージだったものの、すぐに通信が復旧して、胸をなで下ろしました。

     そして運命の2005年12月9日、通信途絶。このときは覚悟を固めました。
     ネット上もかなりの盛り上がりで、日々、数々の応援イラストや動画がアップロードされていました。
    ・『今度いつ帰る』

     つやつやP氏の作品。これが一番印象に残っています。

     けれど彼は生きていました。2006年3月7日、記者会見でビーコンを受信できており、精度は低いものの現在位置が推定できていることが発表されました。3億kmの彼方から「ここにいる。僕はここにいる」とかすかな声で、懸命に声を上げていたのです。原因は、姿勢制御用の燃料(ヒドラジン)が何らかの原因で漏れ出したせいだろうと推定されています。
    「はやぶさ」探査機の状況について(JAXAプレスリリース)
     このリリースを読みながら、ほおを熱いものがつたっていました。
     何としてでも生かして、地球に帰す。関係者のそんな思いを裏側に感じたからです。どうもこういった、「人」が必死に頑張っているのが見えるシチュエーションになると、涙腺が弱くなるようです。

     復旧当初に使われた通称「1bit通信」(地上局からある問いかけをして、答えがYesなら探査機は電波をON、NoならOFFすることで行う通信。一度にひとつの質問しかできないのでこの名称がある)は、火星探査機「のぞみ」で培われた手法。スイングバイ技術は「ひてん・はごろも」で獲得した技術。「はやぶさ」は間違いなく、宇宙科学研究所の系譜に連なる探査機です。

     キセノン生ガス噴射による姿勢制御、機体内のガスを完全に蒸発させるためのベーキングなど、数々の手順を踏んでイオンエンジンを本格的に稼働させ、地球に向けて帰還の途に就いたのは、2007年4月25日のことでした。

     帰還の途に就いた「はやぶさ」は、この時点で既に満身創痍でした。3機中2機のリアクションホイールが停止し、更に姿勢制御用の燃料も既になく、このままでは機体の姿勢を保つことすらままなりません。そこで採られたのは、最後のリアクションホイールに加えてイオンエンジンの取り付け台を動かし、更に太陽光圧力をも利用して姿勢制御を行うという、もはや曲芸とも言うべき手段でした。

     次の試練は、2009年11月4日の、イオンエンジン停止でした。
     「はやぶさ」は、A~Dと名付けられた、4基のイオンエンジンを積んでいます。このうちAは打ち上げ直後から調子が悪く、使い物になりませんでした。残ったB、C、Dのうち、Bは帰還開始のための試運転時に停止。Cは帰還開始後に停止。そしてこの日、最後に残った健全なエンジン、Dスラスタも止まってしまったのです。
     このままでは探査機はロスト。つまり未来永劫宇宙を漂う運命となってしまいます。

     1週間後に出たプレスリリースは、誰をも驚愕させる内容でした。
     これが配信されてきたとき、タイトルに「はやぶさ」とあるのを見て、ついにダメか、と覚悟しました。実際、いつそうなってもおかしくないくらいに壊れています。
     けれど、そこに書かれていたのは「帰還開始」の文字。
    「エンジン無いのにどうやって?」
     疑問しか浮かびません。解決方法は、こう書かれていました。
    「スラスタA(打ち上げ直後から使用停止)の中和器と、スラスタB(2007年4月から使用停止)のイオン源を使用する」。つまり、開発スタッフは宇宙空間でエンジンのニコイチをやってのけたのです。しかも、そのための回路はあらかじめ組み込んであったとのこと。このとき自然発生的に生まれたのが、「こんなこともあろうかと」の言い回し。元は宇宙戦艦ヤマトの真田技師長のセリフです。
    ・『探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力』

     だいたい合ってる。

     そして昨日午後、カプセル着地地点であるウーメラ実験場区域に向かうための最終軌道変更が終了したのです。これで、「はやぶさ」の運命は定まりました。
     「はやぶさ」母船は当初、帰還カプセルを切り離したら再度地球を離れる軌道に乗せる予定だったと聞きます。けれど、もはやそれは夢。第一の任務はカプセルを確実に地上に届けること。それを果たすためには、母船の再度の旅立ちを諦めねばなりません。
     「はやぶさ」本体は、カプセルを残し、帰還予定日の6月13日23時前、オーストラリア上空で大気圏に再突入して消滅します。計算上、綺麗に蒸発するようです。そしてこれは、制御された人工物体による、惑星間軌道からの初のダイレクト突入となります。将来地球に落ちてくるかも知れない小惑星の挙動を予測するためには格好の素材。
     科学のために生まれてきた「はやぶさ」は、最後の最後まで科学のために使われるのです。

     私は当初、オーストラリアで「はやぶさ」を出迎えようと思っていました。遠い宇宙を旅してきた、大好きな探査機の最後の輝きを、この目に焼き付けておきたかったのです。
     けれど、それは昨年断念しました。
     詳しいところはこのブログの2009年11月27日の記事、
    改めて、遠征自粛
    にまとめてありますが、

    1.現地に行ってただでさえ大変なスタッフの方々に余計な気遣いをさせてしまうのは、「はやぶさ」ファンである以前に、日本人として本末転倒でしょう。
    2.ウーメラ近辺は交通の便も悪く、また町の宿やインフラも限られている。私が行くと、バスの座席や宿の部屋を一つ塞ぐことになるわけで、望ましいことではないでしょう。
    3.現地軍や政府に対して、宇宙研はかなり気遣いしているようです。
    4.私は、スタッフの方から直接、「できれば日本で応援して欲しい」旨を聞きました。

    という点からです。
     自粛に関してはネット上で色々話も出ていて、実際、既に現地に向かった人もいるようですが、私の判断のきっけけとなったのは

    毎日 帰還日は決まっているのか。
    川口 今のところ言わないことになっている。勘弁してください。旅行する人が大変になったりするので…

    という記者会見でのやりとりでした。
     この時点での決断は、是非はさておき今でも後悔していません。

     帰還当日は、臼田に行くことにしました。日中に「はやぶさ」と最後の交信をする臼田の64mパラボラ(うすださん)を見て(やるかどうかは分かりませんが)、「その瞬間」はアンテナになるべく近いところで、オーストラリアからの中継を見ながら祝杯ならぬ祝リポビタンDを密やかに挙げたいと思っています。

     「はやぶさ」、帰っておいで。
     君が出発したのは、地球。帰ってくるのも、地球。
     みんな、待ってる。
     きっと、待っているから。

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    この記事のコメント
    やってくれたなぁという感想ですよ。

    宇宙でエンジンニコイチをして、最後の最後は大気圏で燃え尽きる、それもたんなる消滅ではなくデータとして貢献し続けるとは・・・
    ここまで来ると涙を誘いますね。

    ただ、気持ちは分からなくないとはいえ、出来る限りの技術的努力を限りなく行ったということに対して、たとえ良い意味でも安易に「変態」というのはとっても違和感があります・・・

    何かに集中する、何かを極めるには有る意味、そういう力が必要なんですけどね。
    2010-06-10 Thu 23:41 | URL | テクノタ #-[ 内容変更]
    たまーに誤解されるので・・・

    私として、違和感を覚えたのは
    『探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力』
    というタイトルについてです
    2010-06-10 Thu 23:43 | URL | テクノタ #-[ 内容変更]
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