東京神田は神保町、御茶ノ水駅の御茶ノ水橋口を出て左に曲がり、明大通りを下りきったところの駿河台交差点、すずらん通りの入り口に面して建つ、書泉ブックマートという一軒の本屋がありました。そう、今日までは。
三省堂と並び立つ、界隈では大きな本屋でした。最終営業日の閉店を見届けてきたので、そのレポートです。

書泉は経営が左前になり、数年前にアニメイトの傘下に入りました。それでもなお、グランデとブックマートの二棟のビルで神保町一丁目に踏みとどまっていましたが、2015年9月30日、ついにブックマートは閉店することになってしまいました。

この店に初めて行ってから、もう15年ほどになるでしょうか。当時関東の片田舎に住んでいた私は、東京に買い物に行くという親にくっついて初めて神保町に足を踏み入れました。その時に買ったのが、当時2Fにあったテーブルゲームコーナーの、とあるTRPGのルールブックと3個の10面体ダイスでした。両方ともまだ家にあります。

その後進学で上京し、色々あって毎日のように神保町に通えるようになり、自然と本屋巡りの定番コースができました。その出発点は、ここ、書泉ブックマートでした。ここの2階でゲームコーナーを覗き、三省堂で文庫コーナーをチェックし、書泉グランデ地下と高岡書店でマンガを見て、すずらん通りを流して羊頭書房に行ってSFを見て、靖国通りを渡ってベローチェで珈琲を飲んで帰る、というのがそのコースです。
この階段をずいぶん上り下りしました。階段の壁にはメッセージボードやフロアの変遷を記した掲示がありました。初めて来た頃は、真ん中のフロア配置だったなあ。

閉店直前の1F

このエレベータ、古くてガクガクしていたのにいつの間にか直っていました。エレベータ脇にはフロア案内が掲示されているのですが、アニメイト傘下になる前後でまるきり変わってしまいました。

いつもの看板キャラ子さんも泣いています。写真は撮っていませんが、1階から2階への階段と4階にはメッセージボードが設置され、皆が思いのたけをこめてを書き込んでいました。

20時半、閉店時刻となったので、店外へ。別れを惜しむ人たちが続々と集結していました。
ですがレジは長蛇の列。最後のお客さんが店を出たのは20時47分のことでした。

お客さんが出ると、店外の看板が片付けられ、店員一同が入り口に集まりました。一礼し、閉店の挨拶が述べられます。

挨拶中。

ここに、閉店の挨拶の全文を文字起こししておきます。きっと他に記録する人もいないでしょう。
えー、本日も、書泉ブックマートにお越しいただきありがとうございました。そして、今日の最終日を迎えるに当たりまして、こんなにたくさんのお客様にご来店頂けたことに、大変、感謝しております。ありがとうございます。
(拍手)
書泉ブックマートは、今日で、9月30日をもって、48年という歴史に、え、が、本日で終えることになりますが、それもひとえに、お買い上げ頂きました、お越しいただきました皆様のおかげだと思っておりますし、たくさんのお客様と、に、お会いできたことは、大変嬉しく思っております。ありがとうございます。えー、わたくしどもはこれから、秋葉原の書泉ブックタワーと、そちらの、本店書泉グランデで、このブックマートで、えー、お客様に喜んでいただけましたお店を、えー、しっかりと再現し、また、たくさんのお客様にお越しいただくよう、頑張って参りますので、引き続き書泉を、どうぞよろしくお願いいたします。本日はどうも、ありがとうございました。
(店員一同長い礼)
(拍手)
(全店員店内に戻り、シャッター閉まり始める。店員一同礼をしたまま、シャッター完全に閉じる)
挨拶が終わると店員一同は店内に戻り、シャッターが降り始めました。それと同時に、深々と礼。集まった人たちからは、万雷の拍手が長く続きます。

1分半かけてシャッターは全て降り、表の明かりが消えました。このシャッターはもう二度と開きません。

時に2015年9月30日、20時53分。神保町の一つの歴史と、私の日常だった場所が終わりました。

一体この店から何冊の本が我が家の本棚にやってきたことでしょう。長い間お世話になりました。ありがとうございました。