文系宇宙工学研究所へようこそ!



    宇宙ニュースが中心のブログです。同人サークル「液酸/液水」の告知ページでもあります。

    告知板  ※IE・Sleipnir・Firefox推奨。
      ようこそ文系宇宙工学研究所へ。
      管理人・金木犀の同人サークル「液酸/液水」の告知ページも兼ねています。

      ロケット打ち上げ見学の案内がメインのはず。種子島、内之浦のロケット&観光情報、最新の宇宙ニュースなどを紹介。
      打上げ見学記「ロケット紀行」シリーズ、打上げ見学と宇宙関係施設観光のためのガイドブック「宇宙へ!」などの同人誌を販売中。


     オススメ・お役立ち  
      ・種子島ロケット見学マップ(PDF版)はこちら>http://www42.tok2.com/home/rocketfan/txt/rocketview.pdf
      ・ロケット見学案内記第6版(PDF版)はこちら>http://www42.tok2.com/home/rocketfan/annai_tane6.pdf

    イベント参加予定:コミックマーケット90(3日目西む-33b)
               


      自家通販、随時受付中です。  委託中(『ロケット紀行』他)通販あり
                 

    H-IIA F31/ひまわり9号打上げ日決定
    JAXA | H-IIAロケット31号機による静止気象衛星「ひまわり9号」(Himawari-9)の打上げについて(JAXA)
     2016年11月1日(火)15時20分~18時18分(日本標準時)
     予備期間は11月2日(水)~平成28年12月31日(土)
    ということになりました。
     NHKの報道によれば、配管からのリークの補修で遅れているこうのとり6号機(H-IIB F6予定)は、2ヶ月以上遅れる見込みとのことで、H-IIB F6とH-IIA F31の順番が逆転しました。
     見に行きたいけれど、ちょっと厳しそうです。今年はSS-520による小型衛星打上げがある予定なので、そちらにターゲッティングしています。
     見に行かれる予定の方は、JAXAから配布されている
    平成28年度 ロケット打上げ計画書 静止気象衛星ひまわり9号(Himawari-9)/H-IIAロケット31号機(H-IIA・F31)(JAXA)
    を一読しておくといいでしょう。
     無事の打上げを祈ります。
    別窓 | 宇宙開発 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    C90頒布物確定
     新刊含めた当日頒布物が確定しましたのでお知らせします。
     3日目西む-33b「液酸/液水」です。

    ・新刊
     RK16表紙統合
    ロケット紀行vol.16 イプシロン試験機/ひさき打上げ見学記

    ・既刊
    :ロケット紀行vol.10、11、12、14 各500円
    (vol.13、15は手持ち分完売につき、以後はCOMIC ZIN様にてお求めください。)
    COMIC ZIN通販ページ

    :ロケット紀行総集編 各1000円
    :竹龍翔影 巻之一 800円
    :宇宙(そら)へ! 第3版 1500円
    :スイングバイ解説本 200円
    :日本人工衛星カタログ第2版 300円
    別窓 | 同人 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    コミックマーケット90新刊について
     本日、コミックマーケット90合わせの新刊を入稿してきました。
    配置:3日目(14日:日曜)西む33-b「液酸/液水」
     いつも通りの宇宙島です。

    ・ロケット紀行vol.19 イプシロン試験機/ひさき打上げ見学記
    B5/40p/表紙フルカラー/予価500円
    RK16表紙統合
    24-25.jpg 28-29.jpg
    36-37.jpg
     内容は、2013年打上げのイプシロン初号機の見学記です。延期前・延期後両方行きましたので、様子がよく分かるのではないかと思います。
     また、コラムとしてイプシロン開発の簡単な経緯と歴史を付しました。参考程度にはなるのではないかと思います。
     1年半ぶりのロケット紀行の新刊、どうぞお楽しみに。



    別窓 | 同人 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    七夕の由来――棚機神事・乞巧奠・牽牛・織女 金木犀の宇宙的雑文32
    七夕の夕べ、その由来について調べたことを書き留めておこうと思う。
    しばしお付き合いのほどお願い申し上げる。

    七夕の行事は、
    1.日本の神事の「棚機」(たなばた)
    2.中国の年中行事の「乞巧奠」(きっこうでん/きこうでん)
    3.織姫・彦星の伝説
    がミックスされたものだ。

    1.棚機は、古い禊の神事。夏のある日、乙女が一晩「機屋(はたや)」に籠って布を織って神に捧げ、豊作と安全を祈願したもの。この機織り役の女性を「棚機女(たなばたつめ)」と呼んだ。棚機は織機のこと、「つ」は現代語だと「の」にあたり、女は女性を指す。あわせて「機を織る女性」だ。「たなばた」の読みはこれが由来。七夕の文字については、「七月七日の夕」が縮まったものだといわれている。

     「棚機女」がどういう行事だったのか、現在3つの説がある。
    一つ目は清い川のほとりに棚を設けて織ったのだという説。
    二つ目は織機が棚のような外見だったという説。
    三つ目は織り上がった布を棚に捧げたのだという説。棚は祭壇であろう。
     全て口承や文献によるので、どれが正しいのか、みんな間違っているのか、考察することはできない。

     棚機神事は、仏教がやってくると神仏習合され、七日盆行事と結び付いて七月七日の夜に固定された。仏教の七日盆は、お盆期間はじめの行事として、墓の手入れや仏具磨きなどをしたものだ。その一環に精霊棚を設け供え物をするというのがあり、ここに棚機が入り込んでいった。

    2.乞巧奠は、中国の年中行事。七月七日の夜、祭壇を設け、針や筆など技芸に使う道具を祀り、酒肴の供え物をして技芸の上達を祈ったものだ。願いをかけるのはここが由来。もとは中国北方の風習だったらしい。

    3.織姫・彦星(牽牛・織女)の伝説。二人が会えるのは年に一度、七月七日の夜だけ。織女は機織り女なので、ここと棚機が結び付いた。さらに機織りは重要な技芸の一つであるから、織女に技芸の上達を祈るということに変化していったのだろう。

     笹に願いをかけた短冊を吊るす。願掛けの由来は乞巧奠であるが、道具だては全く違う。笹は笹竹で、背の小さな竹のこと。「ささ」は古語で「小さいもの」という意味の接頭辞。古来日本では神事に使われたことから、捧げ物という見立てがされたのだろう。短冊は、江戸時代に始まった風習のようだ。寺子屋に通う子供たちが、手習いを書いた神を吊るして学問の向上を祈ったのだというが、まだ史料を見ない。

     こうして3つのことがらがミックスされ、日本の伝統行事である「七夕」となったのだ。

     七夕の夜に雨が降ると、二人は出会えないとする地方と、それでも二人は逢瀬を楽しんでいる、雨は嬉し涙なのだという地方がある。ここには、秋の実りのために雨を願う農民たちの姿が見えかくれしている。

    別窓 | 「金木犀の宇宙的雑文」シリーズ | コメント:0 | トラックバック:0 |
    磁気フライホイール実験装置「じんだい」EM(モックアップ)出現
     長野県須坂市に、「じんだい」(MABES)、「おりづる」(DEBUT)、「ぎんれい」のモックアップ/EMを展示する、新たな資料館ができました。名付けて「宇宙と農業資料館」。
     開設したのは中島厚先生。NALで人工衛星に関わるという、少々変わった経歴をお持ちです。「じんだい」・「おりづる」ではプロマネをされていました。
     航空宇宙三機関合併後はJAXA主幹研究員を務められ、その後信州大学に移られて小型衛星「ぎんれい」プロジェクトのプロマネをされましたが、今年3月に信州大を退任されるのをきっかけに、手持ちの資料を展示公開しようと自宅倉庫を改造して個人博物館を作られました。

     私は昨年2月、信州に「じんだい」のモックや資料があるから見に行かないかと誘われ、開館前前に訪問してきました。
    許可が頂けましたのでその際に撮影した写真を公開したいと思います。このようなものが残っていたことに驚くとともに、残して下さった中島先生に感謝の念がたえません。
     特に「じんだい」は、日本初の相乗り衛星という地位にありながらも種々の思惑によってあまり存在が表に出ていません。宇宙開発ファンの間では資料がない「幻の衛星」として有名で、「金色のサーマルブランケットにくるまれ、冷蔵庫のように四角い」ことしかわかりませんでした。今回搭載機器のバックアップ品や機器配置の検討に使ったモックが出現したことは、これらを知りたい方々にとっては大きな福音ではないでしょうか。
     今週末、改めてご挨拶に伺おうと思っています。

    IMG_5197(1)のコピー
    ・「じんだい」(MABES)機器配置検討用モックアップ
     IMG_5199(1)のコピー
     ・実機内部の機器配置写真

    IMG_5215(1)のコピー
    ・磁気フライホイールテストモデル。まだ稼働する。摺動部がないので非常になめらかな回転だ。

    IMG_5211(1)のコピー   IMG_5212(1)のコピー
    「おりづる」(DEBUT)展示用実物大模型と「ぎんれい」(SHINDAI-SAT)の実物大模型&実験に使用した強力LEDライト

    ※本記事の写真は原資料の所蔵者の意向により、法に定めのある場合を除きいかなる理由があろうと転載を禁じます。

    別窓 | 宇宙開発 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    ASTRO-H「ひとみ」の通信異常発生についてのまとめ
     去る2016年2月17日に打ち上げられた日本のX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)に通信異常が発生しました。
     3月27日18時15分から記者会見が行われ、現状の説明がありました。

     続報は公式後方サイト「ファン! ファン! JAXA!」内のページにて随時アップされています。
    X 線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の状況について(ファン! ファン! JAXA!)

     3月28日11時に報道向け発表があり、ファン! ファン! JAXA!にも掲載されました。
     3月29日19時にJAXAから報道向け発表あり、、ファン! ファン! JAXA!にも掲載されました。
     以下の記事は、JAXA発表、報道関係者のtweet、あるいは関係諸機関の発表をもとに、一部筆者のことばを交えて記しています。上からおおむね時系列順になっています。

     抜け漏れ、ミスにお気づきの場合はお知らせ下さい。以下は追加情報が出たり、後で気づいたことがあった場合に随時追記予定です。

     2016(平成28)年3月26日16時40分の運用から、電波が受信できていない。
     受信した分のテレメトリ解析は完了しておらず、加えて障害発生以降のテレメトリが取れていない。
     ゆえに、以下に記す衛星の状態の多くは状況証拠を集めた結果の推測と心得られたし。

    テレメが前述の通りなので推測であるが、現状は、
    1.姿勢異常発生
    2.それに伴って太陽電池に光が正常に当たらなくなる
    3.発生電力が低下
    4.衛星の電源が落ちる
    5.通信途絶
    というシナリオが考えられている。原因は現段階では不明。
     通信異常発生から現在まで、短時間の電波受信はできたがテレメトリを落とすまでには至っていない。
     また、太陽補足を示す信号(サンプレゼンス)も確認できていない。
     現在のところセーフモードへの移行は確認できていない。なお、「ひとみ」のセーフモードは地球指向で姿勢固定となる。
     観測機器の冷却に使う液体ヘリウムは、衛星の電源が落ちたまま一ヶ月たつと完全に蒸発してしまっている可能性があるが、機械式冷凍機を使うことによってそれと同等の精度は確保できる。
     衛星構体内部の温度分布が正常と異なっている。機器の温度分布を見ると、ある面側のものは本来より低く、他のある面は本来より高い温度となっている。これによって姿勢擾乱が起きたことが推定される。だが、現状どのような姿勢なのかはわからない。
     なお、姿勢は、このまま無制御の状態が続くと長軸に沿って回転するように収斂する。
     高度は、異常発生時刻ごろを境にわずかに下がっている。

     ここから先は地上のお話なので事実。

     衛星には通信速度が速い順にハイゲイン・ミドルゲイン・ローゲインのアンテナが搭載されているが、現在ローゲインアンテナを用いてコマンドを通し、テレメトリデータを落とすべく検討と運用を行っている。
     それぞれのアンテナがどういう役割なのかについては以下を参照。
    ローゲインアンテナはなぜ重要なのか:宇宙機のアンテナについて(togetter)
     復旧運用のために、アンテナと人員(JAXA「ひとみ」チームとメーカー等の技術者、合わせて3~40人規模)の優先割り当てを受け、運用時間を多くとっている。運用に用いるアンテナは、現在のところJAXAの国内外5通信所の6局(国内局は内之浦34m・内之浦20m・勝浦、海外局はサンチャゴ・マスパロマス・ミンゲニュー)である。外国の所有する局を利用する場合は、NASA DSNのゴールドストーンとキャンベラが考えられるが、通信可能時間が劇的に長くなるわけではないので今のところJAXA通信局だけでまかなう方針のようだ。

     現在JAXAでは、理事長をトップとする対策本部を立ち上げ、事態の検討と今後の対策立案を行っている。この、理事長をトップとする対策本部は、今回でJAXA発足以来3度目の立ち上げとなる。1回目は「みどりII」(ADEOS-II)の異常発生時、2回目はH-IIA F6打ち上げ失敗時で、ともに2003年のJAXA発足直後のことだ。

     次の記情報発表は3月28日午前11時をめどに行われる予定。

    追加:3月27日23時54分のアメリカのJSpOP(アメリカ国防総省戦略軍統合宇宙運用センター)の情報が気にかかる。悪い知らせであり、色々推測できそうな内容だが、JAXAの公式情報を待つ。
    (暫定訳>JSpOCはIDをもつ二つの物体について分離したであろうことを確認:SL-12ロケットブースタ(33472)01:45UST、21個。ひとみ(ASTRO-H 41337)08:20UST、5個。この現象は関連していない。)

    追加:2016年3月28日(月)11:00発表梗概
     「ひとみ」はまだ通信復旧できていない。それ以外は新情報なし。米国JSpOCの「5つに分離した」発表(上記引用参照)については、発表された分離確認時刻以降も短時間ではあるが「ひとみ」からの電波が受信できたので、因果関係を確認中。

    追加:3月28日夜の「ひとみ」可視パスにて撮影に成功した方がいた。


     ナショナルジオグラフィック(米国)オフィシャルブログでは、動画が公開されていた。写真以上に明滅が不規則な様子がわかるので、以下のリンクからぜひ見ることをお勧めする。
    Video Shows Troubled Japanese Spacecraft Tumbling in Orbit(National Geographic)
    タイトル直訳:軌道上でタンブリング問題を抱えた日本の宇宙機のビデオ

     ということで、光度変化が見られることから、「ひとみ」はスピン(回転)していると考えられる。
     スピンしていると考えられる理由は以下の通り。
    1.正常ならば同じ明るさの一本線で写るはず
    2.しかし写真だと明滅している
    3.明滅するということは、衛星が光を反射する能力に変化があるということ
    4.光の反射強度は面積によって変わる
    5.地上から衛星を見て面積の変化があるということは、スピンしていると考えられる
    6.なぜならば、「ひとみ」は以下の画像のような形をしており、どの方向から見るかによって形が変わる、すなわち見た目の面積が変化するからである
    1c26fa2e48f1b0b517c872361c979f8c.jpg
     常に機体がスピンする姿勢は、通常の「ひとみ」運用では取らせない姿勢だ。外的にせよ内的にせよ、何らかのモーメントが加わった事象が考えられるが、原因はやはり明らかになっていない。
     また、上記写真では先だって報じられた「5つの物体が分離した」事象について、分離した物体は映り込んでいない。ただしこれは映り込んでいないことをもって破片が小さいとは直ちに言えない。時間が経つと「ひとみ」本体から離れていってしまうためだ。ただ、本体がはっきりと映り込んでいる以上、レーダーに反応するくらいには大きい(5cm角)が、空中分解と言うには小さいものだったと推測している。
     また、分離を報じたJSpOCからは続報が出た。
     (暫定訳:ASTRO-Hのブレークアップ(分離)は01:42USTプラスマイナス11分に発生)

     3月29日19時にJAXAから報道向け発表が出た。内容は以下の通りであるが、電池は尽きていなかった模様。
    http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/7243.html
     28日(月)22時頃に内之浦で、29日(火)0時半頃にサンチャゴで電波を受信したものの、いずれも極めて短い時間の受信で、衛星の状態は確認できなかった。日本宇宙フォーラムの美星スペースガードセンター(岡山県井原市)の望遠鏡で「ひとみ」を観測し近傍に2つの物体を確認済み。同じく上齋原スペースガードセンター(KSGC)のレーダでは美星で確認した物体のうち1つを確認している。なお、サンチャゴで受信できた電波は、KSGCで観測した物体の軌道方向からのものであることを確認した。
     JAXAとしては、JSpOCが公表している情報および今回の通信異常との関係について引き続き確認中。

     米軍筋よりの「タンブリングはデブリ衝突が原因ではない」という見解が、あちらのwebニュースサイトに載りました。
    U.S. Air Force: No evidence malfunctioning Japanese satellite was hit by debri(SPACE NEWS)
    (タイトル訳>米空軍:日本の人工衛星の異常な挙動はデブリ衝突だという形跡がない)
    U.S. military rules out collision as cause of Hitomi satellite’s woes (SPACEFLIGHT NOW)
    (タイトル訳>米軍は「ひとみ」衛星の災難の原因として衝突を除外した)

     4月15日の定例記者説明会で、姿勢異常からパーツ分離に至るまでの予測シナリオが発表された。
     予測であって、確認された事象ではない。
    以下の説明は
    X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の状況について(4月15日更新)
    にある記者説明会資料のPDFに基づいて筆者が書いたものだ。

     3月26日、活動銀河核観測のため、姿勢変更。
     姿勢変更終了後、姿勢制御系の異常な動作によって、「ひとみ」は実際には静止しているはずの機体が回転していると誤判断した。
     誤判断に基づき「ひとみ」は、機体を静止させようとリアクションホイール(RW)を回した。
     実際には静止していた機体は、ここでRWを動作させたことによって、回転を始めた。

     誤った姿勢情報に基づきRWを回した。当然、これによって姿勢が正しくなる(静止する)はずはなく、RWはやがて制御可能な上限に達する。
     RWには性能の限界値がある。この数値に近くなった場合、別の手段を用いて姿勢制御をし、ホイールの回転数を正常値に保つ機能が組み込まれている。別の手段とは、磁気トルカと姿勢制御用スラスタの噴射である。
     このうち、磁気トルカは姿勢異常のために正常に働かなかったと考えられる。

     やがてRWは上限値を超える。こうなったとき、「ひとみ」はRWに異常が発生したと自律判断し、緊急モードに入るようになっている。名前はスラスタセーフホールドモード(RCS SH)という。これは、姿勢制御用スラスタの噴射によって太陽指向するモードだ。
     この時もRCS SHに入ったと推定できるが、この時に使ったスラスタの制御に関わる数値(制御パラメータ)は間違ったものであった。それによって誤った噴射を行い、かえって衛星の回転を加速させてしまった。
     そして、回転によって生じた力で、構造的に回転に弱い部分が分離した。分離した部分としては、太陽電池パネルの一部や伸展式光学ベンチ(EOB)が想定されている。

     では、なぜこれが起こったのか。
     「ひとみ」の姿勢検知は、二つのセンサによって行われている。
     ひとつはスタートラッカ(STT)。これは、星の位置を検出して現在向いている方向を決めるものだ。位置の変わらない星を指標に使うので正確。けれど星の見えない状況では使えない。具体的には地球を向いている場合などが想定できる。
     もうひとつは慣性基準装置(IRU)。これは、実際に衛星にかかった加速度と方向計測し、「この方向にこのくらいの力が加わったから、今こっちを向いているはずだ」と計算する機械だ。計算結果には僅かに誤差があり、時間によって誤差は蓄積していく。けれどSTTが使えない状況では役に立つ。
     IRUの誤差は、STTが再び星を捉えられるようになったときに、STTの値に基づき補正する。ただし、両者の示す姿勢の誤差が1度を超えた場合は、IRUが優先されることになっている。

     通常はこの二つを組み合わせて姿勢検知を行う。だが、今回はなぜかSTTの数値を取り込まない状態になってしまい、IRUの持っていた誤差のある数字のみで制御を行ったと考えられる。具体的にはZ軸周りに21.7度ズレていた。21.7度のズレを補正しようと「ひとみ」は姿勢制御を試みたのだが、実際にはズレていないことから回転を始めてしまったのであった。

     問題点は2つ。
    一つ目、STTが補正に使えなくなっていた。
    二つ目、RCS SH時の制御パラメータに間違った数字が入っていた

     この二つによって「ひとみ」は姿勢回復が出来ず、回転したままになった。
     速い回転だったので機体が耐えきれず、一部が分離。しかし通信系は生きており、分離後も電波を捉えることが出来た。
     現在はなおも衛星が回転していることから太陽電池に充分な光が当たらず、バッテリが枯渇していると考えられる。

     2016年4月28日、JAXAは「ひとみ」(ASTRO-H)の復旧の可能性はないと判断、運用継続を断念した。
     久々に開いた日本のX線天文学のひとみは、早々に閉じられることとなった。残念である。
     断念に至った理由は以下の通り説明された。

    ・太陽電池パドルが両翼とも根元から分離した可能性が高いこと
    ・3/26、27、28に各1回ずつ受信した電波は周波数が違い、「ひとみ」のものではなかったと判断される
    ・よって現在は全電力を失い、復旧の見込みはないと考えられる

     さすがに太陽電池パドルがなくなってしまってはどうしようもない。バッテリーが枯渇しても充電できないし。
     詳しくはリリースを。
    X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の状況について(4月28日更新)

     驚いたのは、記者会見にて、常田宇宙研所長/JAXA理事が、宇宙研の組織改革が必要と聞けるメッセージを発したことだ。
     さあ、日本の宇宙科学はどうなるのだろうか。これからが正念場だ。

     まことに残念ながら、日本のX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)は、人為ミスからの姿勢異常発生を経て太陽電池パドル完全破断となり、一番重要な電源を失って二度と復活できなくなった。
     この事象を徹底的に解析し、次に活かしていくことを望むものだ。
     対象がいなくなってしまったので、本記事はここでクローズする。

    別窓 | 宇宙開発 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    東京とびもの学会2016出展します
     あと11時間程で開始しますが、本年のとびもの学会に出展します。
     配置はD7。新刊有り、昨年末に取材に行った、強化型イプシロン2段目エンジン(M-35)の地上燃焼試験のレポートです。
     当日会場のみの頒布となりますから、くれぐれも通販でなどと言わず、現地にお運び下さいませ。

     では、ハイライフプラザ板橋にて、皆様にお目にかかれますことをお待ち申し上げます。

    別窓 | 同人 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    北朝鮮、衛星打ち上げを通告
     しばらく前から北朝鮮周りがざわついていましたが、このたび人工衛星打ち上げが国際機関に通告されたとのことです。
     今のところ国際海事機関(IMO)と国際電気通信連合(ITU)への通告の情報しか出ていませんが、2012年の状況を考えると国際民間航空機関(ICAO)への通告も行われているか、あるいは近いうちに行われると考えてよいでしょう。
     打ち上げ予定期間は2016年2月8日~25日の間となっています。H-IIA F30が2月12日予定ですから影響があるのかどうか注視が必要です。

     さて、そんな北朝鮮の衛星打ち上げですが、残念ながら今回も国際承認を取れていません。
    北朝鮮、人工衛星打ち上げに成功(2012年12月12日)
     以前上記の記事で指摘した点については、この3年で解決していません。まず、北朝鮮の打上げを事実上国際的に制約している国連安保理決議1718号http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/anpo1718.htmlは撤回されていません。核拡散防止条約からの脱退と核兵器の保有を問題視しているのであって、これが解決されない限り同決議の撤回はありません。
     よって、北の打上げが国際承認を得られる機会はほぼないと思ってよいでしょう。
     加えて、ロケット打ち上げ国が加入すべき条約と協定、
    宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約(宇宙損害責任条約)
    宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定(宇宙救助返還協定)
    にも未加入です。これは打ち上げたロケットや衛星が他国に損害を与えた場合や他国に落下した場合の補償などについて定めたものであり、宇宙開発における基本国際法となっています。
     そんな中、IMO・ITU・(ICAO)への通告を行ったということは、現在北朝鮮ができることはやったということになります。ここは評価すべき点と考えています。

     事実として北朝鮮は衛星打ち上げ能力を保有しているのであって、それ自体は道具の使い方ですから是非を問うべきことではありません。願わくば北朝鮮が堂々と打上げができる日が訪れんことを祈っています。

    別窓 | 宇宙開発 | コメント:0 | トラックバック:0 |
    | 文系宇宙工学研究所 | NEXT
    1. 無料アクセス解析